猫土偶は、福島県郡山市の町B遺跡から出土した「猫の頭のように見える土製品」を指して検索されることが多く、現在は「じょもにゃん」の愛称で知られています。ただし、考古学的に猫を表した土偶と確認されているわけではなく、発掘調査報告書では用途不明の土製品として扱われています。実物は大安場史跡公園のガイダンス施設で展示されており、郡山市歴史情報博物館ではレプリカを見ることができます。この記事では、何が分かっていて何が謎なのか、縄文時代に猫はいたのか、展示場所やアクセス、似た「ヤマネコ土偶」との違いまで整理します。
猫土偶の正体は郡山市・町B遺跡の「じょもにゃん」
最初に結論を整理すると、「猫の姿をした縄文土偶が郡山市で発見された」と断定するのは正確ではありません。郡山市西田町鬼生田の町B遺跡から出土した土製品が、正面から見ると猫の頭のように見えることから注目され、後に「じょもにゃん」という愛称が付けられました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般的な呼ばれ方 | 猫土偶、猫型土偶、ねこ頭形土製品など |
| 愛称 | じょもにゃん |
| 正式な資料の扱い | 町B遺跡出土土製品。発掘調査報告書では使途不明の土製品 |
| 出土地 | 福島県郡山市西田町鬼生田の町B遺跡 |
| 年代 | 縄文時代後期・晩期の遺物包含層から出土し、同時期の遺物とみられている |
| 本当に猫か | 確認されていない。モチーフと用途は不明 |
| 愛称決定 | 2023年 |
| 実物を見られる場所 | 大安場史跡公園ガイダンス施設 |
| レプリカ | 郡山市歴史情報博物館で展示 |
正式には「猫の土偶」と断定されていない
検索では「猫型土偶」「縄文猫」「猫の土偶」と表現されることがありますが、郡山市が紹介している考古学上の位置付けでは、猫を造形した土偶とは断定されていません。2005年に刊行された町B遺跡の発掘調査報告書でも、用途が分からない土製品として報告されています。
そもそも土偶は一般に人の形を基本とする土製の造形物を指します。一方、町B遺跡の資料は横長の形と左右の突起が猫の頭を思わせるものの、「何を表したものなのか」「どのように使ったのか」という二つの重要な点が判明していません。
そのため、記事や観光情報で分かりやすく「猫土偶」と呼ぶ場合でも、歴史資料として説明するときは「猫の頭のように見える土製品」と理解しておくと誤解がありません。
「じょもにゃん」は2023年に付けられた愛称
現在広く使われている「じょもにゃん」は、発掘当時からの名称ではありません。大安場史跡公園が2023年に愛称を募集し、3,802件の応募から選ばれました。「縄文」と猫を連想する「にゃん」を組み合わせた、覚えやすい名称です。
愛称が付いたことで、この資料は専門的な考古資料としてだけでなく、郡山の縄文文化に関心を持つ入口としても扱われるようになりました。一方で、「じょもにゃん」という名称そのものが猫であることを考古学的に証明しているわけではありません。
2019年の福島県立博物館の企画展を機に知られるようになった
郡山市の公式解説によると、この土製品は2019年に福島県立博物館の企画展で猫のように見える資料として紹介され、広く知られるきっかけになりました。その後、写真やSNSなどを通じて、丸みを帯びた輪郭と二つの突起が猫の耳のように見える造形が注目されます。
興味深いのは、発掘された時点から「猫の像」と認定されていたわけではなく、現代の人が見たときに猫を連想することから評価が広がった点です。この「考古資料としての事実」と「現代人が感じる見え方」を分けることが、じょもにゃんを理解する重要なポイントです。
じょもにゃんは本当に縄文時代の猫なのか

検索する人が最も気になるのは、「縄文人が猫を飼っていて、その猫をモデルに作ったのではないか」という点でしょう。しかし、現在確認されている情報から、じょもにゃんを縄文時代のイエネコ像と考えることはできません。郡山市もモチーフを特定しておらず、用途についても不明としています。
縄文時代のイエネコを表した証拠とはいえない
郡山市歴史情報博物館の解説では、現在私たちが身近に見るようなイエネコが日本へ入った時期について、一般には平安時代以降とされることを紹介しています。一方、近年の研究では弥生時代後期のイエネコとみられる事例も報告されています。
いずれにしても、町B遺跡のこの資料は縄文時代後期・晩期のものとみられているため、「縄文人が飼っていたイエネコをモデルに作った」と説明できる証拠はありません。猫に見えることと、本当に猫を造形したことは別の問題です。
二つの突起が「猫の耳」に見える
じょもにゃんが猫を連想させる最大のポイントは、横長で丸みのある本体と、その上に並んだ二つの突起です。正面に近い方向から写真を見ると、左右の突起が耳、中央部分が猫の顔のように感じられます。
ところが郡山市歴史情報博物館が別角度から観察した解説では、この突起は単純な三角形の猫耳というより円錐状に近い立体的な形です。正面写真だけで見る印象と、斜めや上方向から実物を見る印象には違いがあります。
この点は、じょもにゃんを見る際の面白いポイントです。「猫にそっくりか」を確認するだけではなく、見る方向によって何に見えるのかを比べてみると、考古資料を立体物として観察する楽しさが分かります。
何を作ったものなのかは現在も分かっていない
では猫でないなら何なのかという疑問が残りますが、ここで動物名や用途を推測して断定することもできません。現在の資料では、何をかたどったものなのか、何のために作られたのかについて確定した説明はありません。
考古資料では、現代人に何かの形に見えることと、当時の制作者が何を意図していたかは分けて考える必要があります。じょもにゃんの場合は、その「答えが確定していないこと」自体が重要な特徴です。
- 猫を造形したことを示す決定的な証拠は確認されていません。
- 発掘調査報告書では使途不明の土製品とされています。
- 縄文時代後期・晩期の遺物とみられています。
- 現在のイエネコをモデルにしたと断定することはできません。
- 見る角度によって猫らしさの印象が変化します。
「猫であるか、猫でないか」の二択で見るよりも、縄文時代の人がどのような意図でこの形を作ったのかを想像しながら観察する方が、資料本来の面白さを感じやすいでしょう。
猫土偶「じょもにゃん」の実物は大安場史跡公園で見られる
じょもにゃんを実際に見たい場合は、福島県郡山市田村町にある大安場史跡公園のガイダンス施設が基本の目的地です。郡山市の案内では実物が同施設で展示され、郡山市歴史情報博物館ではレプリカが展示されています。展示資料は貸し出しなどで変更される可能性もあるため、遠方から訪れる場合は直前に展示状況を確認すると安心です。
| 項目 | 大安場史跡公園ガイダンス施設 |
|---|---|
| 所在地 | 福島県郡山市田村町大善寺字大安場160 |
| 開館時間 | 9時から17時 |
| 最終入館 | 16時30分 |
| 休館日 | 毎週月曜日。月曜日が祝日の場合は翌日。年末年始は12月28日から1月4日 |
| 入場料 | 無料 |
| 駐車場 | 第1・第2駐車場を合わせ普通車120台、バス7台 |
| 公共交通 | 郡山駅前2番乗り場から東山霊園・蓬田方面のバスを利用し、金屋下車後徒歩約20分 |
| 車 | 郡山ICから国道49号をいわき方面へ約40分 |
実物を見るなら正面だけでなく斜めからも観察する
写真でじょもにゃんを知った人は、まず正面の姿を確認したくなるでしょう。しかし、現地で見る価値が大きいのは、立体的な厚みや突起の形を複数の角度から確認できることです。
特に「耳」に見える部分がどのように立ち上がっているのかを観察すると、平面写真で受ける猫らしい印象とは少し違って見える可能性があります。展示ケースに触れることはできませんが、可能な範囲で左右やや斜めから見ると資料の形を理解しやすくなります。
大安場史跡公園では展示室と映像室の写真・ビデオ撮影について、私用目的であれば可能と案内されています。ただし、企画展示や貸出資料など個別に制限が設定される場合も考えられるため、現地表示を優先してください。
大安場史跡公園では古墳も一緒に見学できる
じょもにゃんだけを目的に訪れてもよいですが、大安場史跡公園は本来、大安場古墳群を中心とした史跡公園です。ガイダンス施設の展示と屋外の史跡を組み合わせることで、縄文時代の町B遺跡出土品だけでなく、郡山地域の古墳時代まで時代を広げて学べます。
大安場1号墳は全長約83メートルの前方後方墳です。猫のような小さな土製品と大規模な古墳を同じ場所で見ると、郡山市内に残された考古資料の年代や性格が大きく異なることも理解しやすくなります。
車なら駐車場があり、公共交通は徒歩時間を見込む
車の場合は第1・第2駐車場が整備されています。じょもにゃんを見ることが主目的なら、ガイダンス施設前にある第1駐車場の利用が分かりやすいでしょう。ただし、第1駐車場はガイダンス施設の休館日には利用できません。
公共交通では郡山駅前からバスを利用できますが、金屋バス停から徒歩約20分かかります。往復のバス時刻も含めて計画しておくと安心です。営業時間や休館日は変更・臨時変更の可能性があるため、訪問日には大安場史跡公園の最新案内を確認してください。
町B遺跡とじょもにゃんが注目されるまでの流れ
じょもにゃんを理解するには、かわいい猫型の出土品として見るだけでなく、出土地である町B遺跡との関係を知ることが重要です。町B遺跡は郡山市西田町鬼生田にある縄文時代の遺跡で、縄文時代中期後葉から晩期を中心とする集落遺跡として調査されています。
町B遺跡は郡山の縄文時代を考える重要な遺跡
町B遺跡からは、じょもにゃんだけが単独で発見されたわけではありません。住居跡をはじめとする遺構や、土器、土偶など多様な遺物が確認されており、郡山市では縄文時代を代表する遺跡の一つとして紹介されています。
じょもにゃんに相当する土製品は、縄文時代後期・晩期の遺物を含む層から出土しており、その時期のものと考えられています。つまり「かわいい形だけが偶然残った」というより、縄文集落の暮らしを伝える多数の資料の中の一つとして位置付ける必要があります。
2005年の発掘調査報告では使途不明の土製品
町B遺跡の発掘調査成果は2005年刊行の報告書にまとめられています。この段階で現在の「じょもにゃん」という名称が付いていたわけではなく、用途が特定できない土製品として報告されていました。
この経緯を知っておくと、「縄文時代から猫の土偶として伝わってきた」という誤解を避けられます。発掘された考古資料が、展覧会で新しい視点から紹介され、現代の人々によって別の見方を与えられた好例ともいえます。
2019年の展示から2023年の愛称決定へ
2019年に福島県立博物館の企画展で紹介されたことをきっかけに、猫のように見える造形が広く知られるようになりました。その後、大安場史跡公園が愛称を募集し、2023年2月22日の猫の日に合わせて「じょもにゃん」という名称が発表されています。
応募総数は3,802件でした。「じょもにゃん」のほかにも、出土地の鬼生田や町B遺跡に由来する名称が候補となっており、猫に見えるという印象だけでなく、出土地や資料としての背景をどう名称に反映させるかも考えられていました。
郡山市歴史情報博物館ではレプリカと3Dで楽しめる
2025年に開館した郡山市歴史情報博物館では、じょもにゃんの実物ではなくレプリカが展示されています。また、デジタル技術を使って資料を観察できる仕組みも用意されており、通常の展示ケースでは見にくい方向から形を確かめる楽しみがあります。
博物館の敷地には、じょもにゃんの形を取り入れた意匠も隠されています。実物を見ることを最優先するなら大安場史跡公園、郡山の歴史全体と組み合わせて理解したいなら郡山市歴史情報博物館という使い分けが分かりやすいでしょう。
「じょもにゃん」とヤマネコ土偶は別の考古資料
猫に見える縄文資料を調べていると、山梨県から出土した通称「ヤマネコ土偶」が見つかることがあります。これは郡山市のじょもにゃんとはまったく別の資料です。検索画像だけを見て混同しないよう、出土地・年代・資料の種類を比べておきましょう。
| 比較項目 | じょもにゃん | 通称ヤマネコ土偶 |
|---|---|---|
| 出土地 | 福島県郡山市西田町鬼生田・町B遺跡 | 山梨県笛吹市御坂町上黒駒 |
| 年代 | 縄文時代後期・晩期の遺物とみられる | 縄文時代中期 |
| 資料の扱い | 使途不明の土製品 | 土偶 |
| 猫らしく見える部分 | 横長の形と二つの突起が猫の頭のように見える | 東京国立博物館が「山猫のような面貌」と解説 |
| 形 | 頭部のように見える小型の土製品 | 身体と腕を持つポーズ土偶 |
| 現在の主な所蔵・展示先 | 大安場史跡公園 | 東京国立博物館所蔵 |
ヤマネコ土偶は山梨県出土の「ポーズ土偶」
通称ヤマネコ土偶は、山梨県笛吹市御坂町上黒駒から出土した縄文時代中期の土偶で、東京国立博物館が所蔵しています。高さ25.2センチ、幅21.1センチ、厚さ9.3センチとされ、胸に左手を当てた姿をしています。
東京国立博物館では、しぐさや行為を表したタイプを「ポーズ土偶」と説明しています。その顔について「山猫のような面貌」と表現しているため、猫型の縄文資料として検索結果に登場することがあります。
じょもにゃんは頭だけの土偶が壊れたものとは断定できない
じょもにゃんを見ると「もともとは猫型土偶の頭だったのでは」と考えたくなりますが、確認されていない部分を補って説明することはできません。現在確認できる資料では、何かの像の頭部だった、身体が失われた、動物を表したといった結論は出ていません。
ヤマネコ土偶のように全身の造形が確認できる資料とは性格が異なります。その違いを踏まえると、「猫に見える縄文資料」という共通点だけで同じ種類に分類しないことが大切です。
検索するときは「じょもにゃん」も併用すると探しやすい
郡山の資料について詳しく調べたい場合は、「猫土偶」だけでなく「じょもにゃん」「町B遺跡」「ねこ頭形土製品」「大安場史跡公園」といった語を組み合わせると、郡山市や施設による情報を見つけやすくなります。
逆に「ヤマネコ土偶」「上黒駒土偶」で検索すると山梨県出土の別資料が中心になります。猫に見える縄文資料には複数の例や現代作品があるため、出土地を確認することが最も簡単な見分け方です。
猫土偶を見に行く前に知っておきたいポイント

じょもにゃんは「猫そっくりの縄文遺物」という入口から楽しめますが、事前に事実と愛称を分けて知っておくと見学がさらに面白くなります。特に、実物の立体的な形、出土した町B遺跡、現代になってから愛称が生まれた経緯の三点に注目してみてください。
「猫だ」と決めてから見るより形そのものを観察する
写真を先に見ていると、人は猫の耳や頭を探すように実物を見てしまいます。一度「猫」という先入観を外し、左右の突起、本体の丸み、裏面や側面の形を観察してから、改めて正面を見るのがおすすめです。
すると「やはり猫に見える」「横からは全然違うものに見える」など、自分なりの発見ができます。これは正解を当てるというより、限られた資料から過去を考える考古学的な見方を体験する方法です。
実物目的なら展示状況を確認する
2026年に大安場史跡公園が公開した案内では、じょもにゃんはガイダンス施設展示室で展示されています。一方、博物館資料は企画展への貸し出しや展示替えなどで一時的に見られなくなる可能性があります。
特に県外からじょもにゃんだけを目的に訪れる場合は、当日の開館情報と合わせて実物が展示中か確認しておくと確実です。郡山市歴史情報博物館ではレプリカを見ることができるため、両施設を組み合わせる方法もあります。
じょもにゃん関連グッズもある
じょもにゃんの形は現代のグッズにも展開されています。郡山市歴史情報博物館では、じょもにゃんをモチーフにした置物を受付で販売しており、公式案内では税込1,000円です。郵送販売は行っていないと案内されています。
また、新潟県の瓦メーカーによって、町B遺跡出土の土製品をモチーフにした「a-be cat. jomon」も制作されています。安田瓦の素材と技術を使った現代の商品であり、縄文時代の出土品そのものや復元品ではありません。
このような商品を見るときも、「実物の考古資料」「実物をもとにしたレプリカ」「モチーフを利用した現代商品」を区別すると分かりやすくなります。
まとめ
猫土偶として知られる郡山市の「じょもにゃん」は、西田町鬼生田の町B遺跡から出土した縄文時代後期・晩期のものとみられる土製品です。正面から見ると猫の頭に似ていますが、発掘調査では使途不明の土製品とされ、猫を表したものかどうかも分かっていません。実物を見たい場合は大安場史跡公園のガイダンス施設が基本の見学先です。正面写真だけで判断せず、立体的な形や出土背景まで確認すると、この資料が単なる「かわいい猫型」にとどまらないことが分かります。山梨県出土のヤマネコ土偶とは別資料なので、検索時には「じょもにゃん」「町B遺跡」を組み合わせると探しやすいでしょう。


